脱エクセル研究所 > 脱Excelの要件定義はどう進める?機能一覧と優先度を整理する方法
2026年4月18日
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脱Excelの要件定義で、既存Excelと関係者のブレストから機能一覧を作り、優先度、担当者、期限を決めてプロジェクトとして進める方法をまとめました。
現状分析や運用ルールまでは整理できました。でも要件定義となると、急に何を作ればいいのか分からなくなります。機能一覧を作ればいいんでしょうか。
その考え方でよいぞ。ただし、思いついた機能を並べるだけでは足りん。既存Excelと関係者の話をもとに、優先度、担当者、期限まで決めるのが大事じゃ。
脱Excelの要件定義でやるのは、欲しい機能を思いつきで並べること ではありません。
現状分析、課題整理、運用ルール設計で見えた内容をもとに、次を整理します。
つまり要件定義は、脱Excelをプロジェクトとして動かせる形にする工程 です。
ここまで整理できると、ツール選定や開発の話に入っても、判断がぶれにくくなります。
全体の流れを先に確認したい場合は、親記事から戻ると整理しやすいです。
前のフェーズである運用ルール設計がまだ曖昧なら、こちらも先に読むとつながりやすいです。
脱Excelの運用ルール設計で決めること|誰が入力し、誰が確認するか
脱Excelの要件定義でよくある失敗は、いきなりツールの機能一覧を見て、
と判断してしまうことです。
もちろん、最終的にはツールの機能も見ます。
ただし、その前に 自社の業務として何が必要か を言葉にしておかないと、ツール側の都合に引っ張られます。
たとえば、kintoneに承認機能があるから承認フローを作る、Power Appsで画面を作れるから入力画面を増やす、という順番では危険です。
先に決めたいのは、どの業務で、誰が、何を判断する必要があるのか です。
要件定義の材料は、ゼロから考えるものではありません。
すでにあるExcelと、関係者の話の中にかなりのヒントがあります。
既存Excelを見るときは、列名だけでなく、実際に業務で使われている意味まで見ます。
ここで大事なのは、Excelをそのまま再現することではありません。
Excelの列を、業務として必要な情報に言い換える ことです。
たとえば「メモ1」「メモ2」「備考」のような列が複数あるなら、本当に自由メモが必要なのか、次回対応日や対応履歴として分けるべきなのかを見ます。
脱Excelでは、現場だけでなく、関係者ごとに見たいものが違います。
この違いを聞かずに機能を決めると、あとで「その一覧も欲しい」「その権限では困る」が増えます。
ブレストでは、誰が何を見るための機能なのか を必ずセットで聞きます。
Excelの列をそのまま機能名にするのではなく、誰が何のために使うかまで見るんですね。
そうじゃ。列は形で、要件は意味じゃ。そこを分けると、不要な機能も見えやすくなるぞ。
材料が集まったら、機能一覧を作ります。
最初から完璧な要件定義書にしなくても構いません。
まずは、次の形で1枚にまとめると話が進めやすいです。
| 機能 | 目的 | 優先度 | 担当者 | 確認者 | 期限 |
|---|---|---|---|---|---|
| 案件情報を登録する | 正本を1か所に集める | 高 | 営業企画 | 営業責任者 | 5月末 |
| ステータス別に一覧を見る | 会議前の別集計をなくす | 高 | 情シス | 営業企画 | 5月末 |
| 承認済み案件だけ請求予定に回す | 請求漏れを減らす | 高 | 管理部 | 経理 | 6月中旬 |
| 担当者別の月次レポートを見る | 会議資料作成を減らす | 中 | 経営企画 | 管理部 | 6月末 |
| 過去履歴を検索する | 引き継ぎを楽にする | 中 | 営業企画 | サポート | 7月上旬 |
機能名は、できるだけ業務の言葉で書きます。
「一覧画面」「詳細画面」だけではなく、何を見る一覧か まで入れると分かりやすいです。
たとえば、
のように書くと、関係者と話しやすくなります。
機能一覧は、開発者だけでなく業務側が読んで分かる言葉で書く のが大事です。
脱Excelでは、出てきた機能を全部作りたくなります。
でも最初から全部入れると、時間も費用も膨らみ、現場の確認も追いつきません。
まずは、次の3段階で十分です。
| 優先度 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 高 | 初回リリースにないと業務が回らない | 登録、更新、検索、権限、承認 |
| 中 | 早めに必要だが、初回後でもよい | 月次レポート、通知、CSV出力 |
| 低 | あると便利だが、なくても始められる | 見た目の細かな調整、追加グラフ |
迷う場合は、業務影響度 と 実装の重さ で見ます。
| 判断軸 | 見ること |
|---|---|
| 業務影響度 | その機能がないと事故、手戻り、二重入力が残るか |
| 利用頻度 | 毎日使うか、月1回だけ使うか |
| 関係者数 | 何人、何部署に影響するか |
| 実装難易度 | 権限、承認、連携、データ移行が重いか |
| 代替手段 | 初回だけ手作業で逃がしても問題ないか |
初回リリースでは、便利機能より事故を減らす機能を優先する と考えると決めやすいです。
機能一覧に優先度を付けたら、担当者と期限を決めます。
ここを曖昧にすると、要件定義は進んでいるように見えて、実際には誰も決めていない状態になります。
最低限、次の3つの役割を分けると進めやすいです。
| 役割 | 決めること |
|---|---|
| 業務担当者 | その機能で実現したい業務の中身を決める |
| 実装担当者 | ツールやシステムでどう作るかを考える |
| 確認者 | できたものが業務に合っているかを確認する |
たとえば、案件登録の機能なら、業務担当者は営業企画、実装担当者は情シスや外部パートナー、確認者は営業責任者という形です。
期限は「全体リリース日」だけでなく、機能ごとに置きます。
機能ごとに誰がいつ決めるかを置く と、脱Excelが会議の話題から実行計画に変わります。
担当者を決めるというと、実装担当だけを思い浮かべていました。業務側の確認者も必要なんですね。
そこが大事じゃ。業務の正解を持っている人が確認しないと、動くけれど使えない仕組みになりやすいからのう。
要件定義から移行までは、次のように小さく区切ると進めやすいです。
| ステップ | やること | 成果物 |
|---|---|---|
| 1. キックオフ | 目的と対象範囲を決める | 目的、対象業務、関係者 |
| 2. 既存Excel棚卸し | 項目、数式、参照、利用場面を見る | Excel棚卸し表 |
| 3. ブレスト | 関係者の困りごとと要望を集める | 困りごと一覧 |
| 4. 機能一覧化 | 必要な機能へ分解する | 機能一覧 |
| 5. 優先度付け | 初回範囲と後回しを分ける | MVP範囲 |
| 6. 試作品確認 | 小さく作って現場に見せる | プロトタイプ |
| 7. データ移行とテスト | 既存データを入れて確認する | 移行チェック表 |
| 8. 運用開始 | 使い方を案内して切り替える | 運用ルール |
MVPという言葉を使うなら、ここでは 最初に業務が回る最小範囲 と考えれば十分です。
全部入りの完成形ではなく、まず事故や二重入力を減らせる範囲から始めます。
脱Excelは一気に全部移すより、小さく始めて広げる方が定着しやすい です。
列、シート、色、計算式をそのまま移すと、Excelの複雑さも一緒に移ります。
特に、使われていない列や、会議資料のためだけに増えた列まで持ち込むと、新しい仕組みが重くなります。
関係者に聞くと、どの機能も大事に見えます。
でも、全部を高にすると優先度を付けた意味がありません。
初回になくても運用で逃がせるものは、中や低に下げます。
優先度は要望の強さではなく、初回運用に必要かで決める とぶれにくいです。
実装担当者だけが決まっていて、業務側の確認者がいないケースです。
この状態だと、作った後に「思っていたものと違う」が起きます。
最終期限だけ決めても、途中で止まっていることに気づきにくいです。
要件確定、試作品確認、データ移行確認など、途中の期限を置きます。
以下は、イメージしやすくするための架空の例 です。
失敗例: 青海産業株式会社(従業員52名 / 建材卸)
営業部の案件管理を脱Excelするため、最初の会議で「今の案件表を全部アプリにする」と決めました。
既存Excelには、案件名、顧客名、見込み金額、確度、備考、会議用メモ、上長メモ、経理確認欄など、長年増えた列が60以上ありました。
そのまま機能一覧にしたため、初回から入力画面が重くなり、現場は「どこを入れればよいか分からない」と感じました。
優先度もほぼ全部が高になり、担当者と確認者も曖昧なまま進んだため、試作品の確認で大量の手戻りが出ました。
失敗の理由は、既存Excelを業務要件に言い換えず、そのまま再現しようとしたこと でした。
成功例: 浜町メンテナンス株式会社(従業員43名 / 設備保守)
この会社では、保守案件、訪問予定、請求準備がExcelで分かれていました。
要件定義では、まず既存Excelの列を棚卸しし、営業、事務、経理でブレストしました。
そこで見えたのは、初回で本当に必要なのは「保守案件の登録」「訪問完了ステータス」「請求予定への引き渡し」「未完了案件の一覧」だけだということでした。
月次グラフや細かなレポートは後回しにし、機能ごとに担当者と確認者と期限を置きました。
その結果、初回リリースでは請求漏れにつながる部分だけを確実に移し、現場の入力負担も増やさずに始められました。
うまくいった理由は、機能一覧、優先度、担当者、期限をセットで決めたこと でした。
要件定義が一段落したら、次にツール選定へ進みます。
ただし、次の質問に答えられないなら、まだ要件定義に戻った方がよさそうです。
ここまで言えると、kintone、Power Apps、AppSheet、Airtable、専用システムなどを比べるときも、判断軸がはっきりします。
ツール選定の考え方は、次の記事で整理しています。
脱Excelの移行ツールはどう選ぶ?kintone・Power Apps・AppSheetの考え方
kintoneを具体的に候補にしている場合は、こちらも参考になります。
脱Excelの要件定義で大事なのは、機能をたくさん出すことではありません。
必要な機能を、優先度、担当者、期限つきで整理すること が中心です。
押さえておきたいのは、次の5点です。
要件定義は、機能を並べるだけじゃなくて、誰がいつ決めるかまで含めて進めるんですね。
その通りじゃ。そこまで決まると、脱Excelは掛け声ではなく、実際に進むプロジェクトになるぞ。
千葉県出身。10歳の頃からプログラミングを始め、ゲーム、Webサイト、ロボット、スマホアプリなどを制作。大阪大学基礎工学部情報科学科で情報工学と統計学を学び、大学時代はAIを研究。大学在学中にWeb広告代理店でのインターンや人材系Webサービスの立ち上げを経験し、卒業後はフリーランスエンジニアとしてGISシステム、データ基盤構築、Webシステムの開発に従事。10年以上のWebアプリ開発・データ分析経験を基に、2023年9月に株式会社ビットライトを設立し、現場業務の仕組み化からデータ基盤構築、データ活用支援までを一気通貫で支援。