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kintone予実管理の設計方法|予算・実績・集計・レポートを分ける構成

2026年6月9日

29分で読めます

kintoneで予実管理を作る前に決めるべき、予算、実績、集計単位、期間、部門、案件、勘定科目、集計結果、定期レポート、freee・基幹・スプレッドシート連携の境界を整理します。

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助手
助手

kintoneで予実管理を作りたいです。予算アプリと実績アプリを作って、集計グラフを置けばよいでしょうか。

博士
博士

集計グラフまでは作れる。ただ、予実管理で本当に難しいのはグラフではない。予算と実績を、同じ粒度、同じ期間、同じ部門、同じ科目で比較できるようにすることだ。

kintoneで予実管理を作るとき、最初に作りたくなるのは予実表です。

部門、月、予算金額、実績金額、差額、達成率。

これをアプリに入れて、グラフ化すれば、予実管理らしい画面はできます。

ただし、実務で崩れるのは、グラフが作れないことではありません。

本当に詰まりやすいのは、次のような状態です。

  • 予算は部門別だが、実績は案件別で入っている
  • 予算は月次だが、実績は請求日や入金日で集計している
  • 会計科目と管理用の科目が合っていない
  • 売上予算、原価予算、販管費予算を同じ構造で扱っている
  • freeeや会計ソフトの数字とkintoneの数字がずれる
  • スプレッドシートで作った予算を、誰がどのタイミングでkintoneへ取り込むか決まっていない
  • 集計結果が毎回変わり、月次会議で見た数字が残らない
  • 予算差分を見ても、担当者、期限、打ち手に戻らない
  • 経営者、部門長、現場担当の閲覧範囲が決まっていない

kintoneで予実管理を作るなら、最初に設計すべきなのは「予実グラフ」ではありません。

予算、実績、集計単位、期間、部門、案件、科目、集計結果、レポート、会議後のアクションをどこで分けるかです。

kintone予実管理で最初に決めるべきなのは、どのプラグインを使うかではなく、「予算と実績を何の単位で比較するか」です。

この記事では、kintoneで予実管理を崩れにくい業務システムとして設計する方法を整理します。

kintone売上管理の設計方法はこちら
kintone案件管理の設計方法はこちら

予算、実績、集計条件、集計結果、定期レポート、freee・基幹連携を分けるkintone予実管理の構成図

先に結論:予実管理は「予算」「実績」「集計結果」を分ける

kintoneで予実管理を作るとき、予実アプリ1つだけでも始めることはできます。

ただし、経営会議や部門別の改善に使うなら、最初から次の情報を分けて考えます。

分けるもの 1レコードの意味 役割
予算 1期間、1部門、1案件、1科目などの計画値 目標として固定または改定管理する
実績 1取引、1売上、1原価、1費用などの発生値 会計・販売・現場データから取り込む
集計条件 期間、部門、案件、科目、担当などの比較軸 予算と実績の粒度をそろえる
集計結果 予算、実績、差額、達成率 会議や改善判断に使う状態を残す
定期レポート 月次、週次、四半期の記録 過去推移と会議時点の数字を確認する
差分アクション 予実差分に対する担当、期限、打ち手 数字を次の行動へ戻す
連携ログ 取込、出力、エラー、再実行 数字の欠落や二重登録を確認する
マスタ 部門、案件、勘定科目、管理科目 集計軸をぶらさない

このうち、すべてをkintoneで手入力する必要はありません。

むしろ、実績値はfreeeなどの会計ソフト、基幹システム、販売管理システム、既存のスプレッドシートから取り込むことが多いです。

kintoneは、集計軸をそろえ、予算と実績の差分を見せ、会議後のアクションを残す場所として使うと強いです。

会計ソフトは、正式な取引、仕訳、税区分、帳簿、決算に向いています。

基幹・販売管理システムは、売上、原価、出荷、請求、在庫など、日々の業務トランザクションの正本になりやすいです。

領域 kintoneで持ちやすい 外部システムを正本にしやすい
予算 部門別、案件別、月別の管理予算 Excelで作った初期予算、経営計画
売上実績 管理会計用の集計結果、予実比較 会計ソフト、販売管理、請求システム
原価実績 案件別、部門別の管理用原価 会計ソフト、購買、在庫、工数管理
費用実績 管理科目別の集計値 会計ソフト、経費精算
差分管理 達成率、未達、超過、担当アクション 原則kintoneで管理しやすい
会議履歴 月次時点のレポート、コメント kintoneで残すと追いやすい

予実管理で重要なのは、数字を1か所に集めることではありません。

数字の意味をそろえることです。

予算の「部門」と実績の「部門」が違う。

予算の「月」と実績の「月」が違う。

予算の「科目」と実績の「科目」が違う。

この状態では、どれだけきれいなグラフを作っても、経営判断には使いづらくなります。

kintone予実管理が向く業務と向かない業務

kintoneは、予実管理に使えます。

特に、部門や案件ごとに予算を持ち、実績と比較し、差分に対してアクションを管理する用途には向いています。

一方で、会計ソフトや基幹システムを置き換えるものとして使うと重くなります。

kintoneに向く予実管理 理由
部門別の月次予実 部門、担当、月、差分を一覧・グラフで見やすい
案件別の予実 案件、売上、原価、粗利、担当アクションをつなげやすい
売上目標と実績の比較 案件管理や売上管理とつなげられる
原価・費用の管理会計 勘定科目を管理科目へ寄せて見せられる
月次会議の差分管理 コメント、担当、期限、次回確認を残せる
予算改定の履歴 当初予算、修正予算、見通しを分けて残せる
未達・超過のアクション管理 タスク、案件、承認とつなげられる

一方で、次の領域はkintoneだけで完結させない方がよいです。

kintoneだけでは重い領域 理由
会計上の正式帳簿 税区分、仕訳、決算、監査確認が必要
請求・売掛・入金消込 会計ソフトや販売管理システムの正本性が重要
大量トランザクションのリアルタイム集計 レコード数、処理時間、API制限、同期設計が絡む
複雑な配賦計算 ルール変更、再計算、履歴管理が重くなりやすい
グループ会社横断の制度会計 連結、為替、会計基準、承認統制が必要
予算編成の高度なシミュレーション 複数案、感度分析、シナリオ比較は専用ツールが向く場合がある

日立システムズの予実管理ソリューションでも、基幹システムとの外部連携や帳票追加の文脈が扱われています。

日立システムズ:予実管理ソリューション

この考え方は、中小企業のkintone活用でも重要です。

すべてをkintoneへ寄せるのではなく、kintoneで見たい数字と、外部システムを正本にする数字を分けます。

kintone予実管理は、会計ソフトの代わりではなく、経営・部門・現場が同じ差分を見て次の判断をするための管理会計基盤として設計します。

予算アプリと実績アプリを分ける

予実管理では、予算と実績を同じアプリに入れたくなります。

月、部門、予算、実績、差額、達成率。

この形は見やすいですが、最初から1アプリにまとめると、後で運用が詰まりやすくなります。

理由は、予算と実績ではレコードの意味が違うからです。

予算は計画値です。

実績は発生値です。

予算は、月次・部門別・案件別・科目別など、比較単位ごとに持ちます。

実績は、売上、原価、費用、入金、請求、工数など、発生した単位ごとに入ってきます。

アプリ 1レコードの単位 主な項目
予算アプリ 1期間、1部門、1案件、1管理科目 予算額、当初予算、修正予算、責任者
実績アプリ 1取引、1売上、1費用、1原価 実績日、金額、部門、案件、勘定科目
集計結果アプリ 1期間、1集計軸 予算、実績、差額、達成率、状態
アクションアプリ 1つの差分対応 担当、期限、打ち手、完了状態
連携ログアプリ 1回の取込・集計処理 取込元、件数、エラー、実行者

予実管理プラグインの設定例でも、予算アプリと実績アプリを分け、予算の期間や分類、実績側の取引日や金額を対応づける考え方が示されています。

アディエム:予実管理プラグイン for kintone 設定方法

これはプラグインを使う場合だけの話ではありません。

標準機能で作る場合も、JavaScriptやAPIで作る場合も、予算と実績のレコード単位は分けて考えます。

複数アプリに分散したデータを集計したい場合は、DataCollect、krewData、予実管理プラグインのような選択肢もあります。

トヨクモ:kintoneで予実管理を行う方法は?

ただし、プラグインや連携サービスは、集計粒度を決めた後に選ぶものです。

月次なのか、案件別なのか、部門別なのか、管理科目別なのかが決まっていなければ、どのツールを入れても設定が曖昧になります。

予算アプリに持たせる項目

予算アプリには、計画値としての責任を持たせます。

フィールド 設計意図
予算年度 ドロップダウン、日付 年度単位で絞り込む
対象月 日付、文字列 月次予実の基準にする
部門 ルックアップ、組織選択 部門別集計の軸にする
案件 ルックアップ 案件別予実を見る場合に使う
管理科目 ルックアップ、ドロップダウン 売上、原価、人件費、広告費などを分ける
当初予算 数値 最初に承認された予算
修正予算 数値 期中で見直した予算
着地見込 数値 現時点の見通し
予算責任者 ユーザー選択 誰が説明責任を持つか
予算状態 ステータス 作成中、承認済み、改定済み、締め済み
改定理由 文字列複数行 予算変更の理由を残す

当初予算と修正予算は、できれば分けます。

期中で予算を上書きすると、「最初の計画からどれだけ変わったか」が見えなくなります。

経営会議で見たいのは、単に今の予算との差額だけではありません。

当初計画に対して、どこで見直しが入ったのか。

見通しは改善しているのか、悪化しているのか。

ここまで見えるようにするなら、当初予算、修正予算、着地見込を分けます。

実績アプリに持たせる項目

実績アプリには、発生値としての責任を持たせます。

フィールド 設計意図
実績日 日付 月次集計の基準にする
取込元 ドロップダウン freee、販売管理、手入力、CSVなど
外部ID 文字列 二重取込を防ぐ
金額 数値 実績集計に使う
税抜・税込区分 ドロップダウン 管理会計の集計基準をそろえる
部門 ルックアップ、組織選択 予算側と対応させる
案件 ルックアップ 案件別予実を見る場合に使う
勘定科目 ルックアップ、文字列 会計側の科目を保持する
管理科目 ルックアップ、ドロップダウン 予算側の科目へ変換する
取引先 ルックアップ、文字列 売上・費用の相手先を確認する
連携状態 ドロップダウン 未取込、取込済み、確認待ち、除外
確認メモ 文字列複数行 科目違い、部門違いなどを残す

実績アプリを手入力だけで運用するなら、入力責任者を決めます。

freeeや基幹から取り込むなら、外部ID、取込日時、取込元、エラー内容を持ちます。

特に外部IDは重要です。

同じ取引を二重に取り込むと、予実差分がすぐに壊れます。

会計ソフトから取り込む場合は、会計上の勘定科目と、管理会計上の管理科目を分けます。

たとえば会計上は「外注費」でも、管理上は「制作原価」「開発原価」「営業支援原価」に分けたいことがあります。

逆に、会計上は複数科目でも、管理上は「広告宣伝費」にまとめたいこともあります。

この変換ルールを決めずに集計すると、会計データを取り込んでも予実比較に使えません。

部門・案件・勘定科目・期間の設計

予実管理の品質は、集計粒度で決まります。

どの単位で予算を置き、どの単位で実績を比較するかです。

最低限、次の4つは先に決めます。

決めること 決めないと起きること
期間 月次、四半期、年度、案件期間 予算月と実績日の比較がずれる
部門 組織、事業、店舗、チーム 予算責任と実績責任がずれる
案件 案件別に見るか、部門別で十分か 案件原価や粗利が見えない
科目 会計科目で見るか、管理科目で見るか 予算科目と実績科目が合わない

期間を決める

予実管理では、月次を基本にすることが多いです。

ただし、すべてを月次で見るとは限りません。

期間 向いている管理
月次 売上、原価、販管費、部門別予実
四半期 経営計画、採用費、広告予算、開発投資
年度 事業計画、固定費、年間売上目標
案件期間 受託開発、制作、工事、プロジェクト収支
週次 広告費、問い合わせ数、短期施策の進捗

問題は、実績日を何にするかです。

売上なら、受注日、売上計上日、請求日、入金日があり得ます。

費用なら、発生日、請求日、支払日、会計登録日があり得ます。

予実管理では、会計処理と同じ粒度で見るのか、管理会議用の発生基準で見るのかを決めます。

kintone売上管理の設計方法でも触れたように、売上計上日、請求日、入金日は分けて持つ方が安全です。

予実管理で使う日付は、その中のどれかを明示します。

部門を決める

部門は、組織マスタそのものを使う場合と、管理会計用の部門を別に持つ場合があります。

方針 向いているケース 注意点
組織選択を使う kintoneの組織と部門が一致している 組織変更時の過去データ扱いを決める
部門マスタを作る 管理会計上の部門がある 組織と部門の対応表が必要
案件側の部門を参照する 案件責任部門で集計したい 売上・原価・費用の配賦ルールが必要
取引ごとに部門を持つ 会計データから部門が入る 会計部門と管理部門の変換が必要

部門は、現在の組織図だけで決めない方がよいです。

予実管理では、過去月の数字を見るため、組織変更や担当変更が起きます。

6月に組織が変わったとき、4月の予算と実績を新組織で見たいのか、当時の組織で見たいのか。

このルールを決めないと、過去推移が読めなくなります。

案件を決める

案件別予実は便利ですが、最初から全社で必須にすると入力負荷が上がります。

案件別に見るべきかは、業務で判断します。

業務 案件別予実の必要性
受託開発、制作、工事 高い。売上、原価、工数、粗利を案件で見る
コンサルティング 高い。人件費や外注費を案件で見る
小売、店舗運営 店舗別・商品別の方が重要な場合がある
定額SaaS、月額保守 顧客別・契約別で見る方が自然な場合がある
管理部門費 案件より部門・科目で十分なことが多い

案件別予実をやるなら、案件マスタが必要です。

案件コード、顧客、担当、開始日、終了日、売上予定、原価予算、状態を持ちます。

案件管理アプリと予実管理をつなげる場合は、案件のステータスも重要です。

提案中、受注済み、進行中、完了、請求済み、失注。

どの状態から予算や実績に入れるのかを決めます。

勘定科目と管理科目を決める

会計ソフトの勘定科目をそのまま予実管理に使うと、経営会議では細かすぎることがあります。

逆に、管理会計用の科目だけで持つと、会計データとの照合が難しくなります。

おすすめは、勘定科目と管理科目を分けることです。

項目 役割
勘定科目 会計ソフト側の正式な科目
補助科目 会計側の詳細分類
管理科目 予算と比較するための社内分類
集計区分 売上、原価、販管費、投資などの大分類
除外フラグ 予実管理に含めない取引を識別する

たとえば、会計上は「通信費」「支払手数料」「広告宣伝費」に分かれていても、経営会議では「マーケティング関連費」としてまとめたい場合があります。

その場合は、会計科目を残しつつ、管理科目を別に持ちます。

この変換テーブルをkintoneに持たせると、freeeや会計ソフトから取り込んだ実績を予算科目に寄せられます。

集計結果をどこに保存するか

予実管理では、集計結果をどこに置くかが重要です。

選択肢は大きく4つあります。

方法 向いているケース 注意点
kintoneのグラフで見る 小規模、単純な集計 会議時点の数字を別途残しにくい
定期レポートを使う 推移を標準機能で見たい 保持回数や権限の注意がある
集計結果アプリに保存する 月次会議や履歴を残したい 集計処理、再計算、ロック設計が必要
外部BI・スプレッドシートへ出す 複雑な分析や全社レポート 正本と更新タイミングを決める

kintoneの標準機能でも、アプリに登録されたレコードの内容や件数、日付データを集計し、グラフや表として作成できます。

kintoneヘルプ:グラフと集計

標準グラフで足りるなら、最初はそれで十分です。

ただし、月次会議で「その時点の数字」を残したい場合は、グラフを見るだけでは足りないことがあります。

会計データの取込が後から修正される。

案件の部門が修正される。

管理科目の変換ルールが変わる。

このような変更があると、過去月のグラフも変わります。

そのため、月次締めや会議時点の予実を残すなら、集計結果アプリを作ります。

集計結果アプリの項目

集計結果アプリには、会議で見る単位を保存します。

フィールド 設計意図
対象期間 日付、文字列 2026年6月、2026Q2など
集計単位 ドロップダウン 部門別、案件別、科目別など
部門 ルックアップ、組織選択 部門別の場合に持つ
案件 ルックアップ 案件別の場合に持つ
管理科目 ルックアップ 科目別の場合に持つ
予算額 数値 比較対象の予算
実績額 数値 集計された実績
差額 計算 実績 minus 予算
達成率 計算 実績 divided by 予算
判定 ドロップダウン 良好、注意、要対応など
集計日時 日時 いつの数字か
集計者 ユーザー選択 誰が実行したか
集計条件ID 文字列 どの条件で出したか
締め状態 ステータス 集計中、確認中、締め済み

集計結果を保存する場合は、再計算ルールも決めます。

論点 方針例
締め前の再計算 何度でも上書きする
締め後の再計算 別バージョンとして保存する
会計修正が入った場合 修正差分として追記する
管理科目ルールが変わった場合 過去月へ反映するか、翌月から適用するか決める
手動調整 調整額と理由を別フィールドで持つ

予実管理では、数字を最新化することと、会議で見た数字を残すことが衝突します。

最新値だけを見たいなら、毎回再集計すればよいです。

しかし、月次会議の判断履歴を残したいなら、その時点の集計結果を保存します。

定期レポートとダッシュボード

予実管理のダッシュボードは、見栄えよりも見る順番が大事です。

最初に全体。

次に差分。

最後にアクション。

この順番で作ります。

表示 目的
全社予実 売上、原価、粗利、費用、利益の全体感を見る
部門別予実 どの部門で差分が出ているか見る
案件別予実 赤字化、原価超過、売上未達の案件を見る
科目別予実 広告費、人件費、外注費などの超過を見る
未確定・未取込 実績の欠落や連携エラーを見る
差分アクション 誰が何をいつまでに対応するか見る

kintoneの定期レポートは、アプリのデータを毎時、毎日、毎週、毎月、毎四半期、毎年などの間隔で集計し、記録できます。

kintoneヘルプ:定期レポートとは

標準の定期レポートは、推移を見る入口として便利です。

ただし、公式ヘルプにもある通り、過去30回分までの集計結果が保持されます。

また、集計対象となるレコードやフィールドは、定期レポートを設定したユーザーの閲覧権限に影響されます。

そのため、経営会議の正式な履歴として長期保存したい場合は、定期レポートだけに依存しない方がよいです。

次のように使い分けます。

目的 推奨
直近の推移を見る 標準グラフ、定期レポート
月次会議の数字を残す 集計結果アプリ
会議コメントを残す 集計結果アプリ、議事録アプリ
長期の経営レポートを作る BI、スプレッドシート、帳票出力
部門長に一部だけ見せる 権限を設計したkintone一覧

ダッシュボードに置く指標は、増やしすぎない方がよいです。

予実管理で見るべきなのは、すべての数字ではありません。

判断が必要な差分です。

freee・基幹・スプレッドシート連携

予実管理では、実績データの多くが外部から来ます。

freeeなどの会計ソフト。

販売管理システム。

在庫・購買システム。

工数管理。

スプレッドシート。

これらをkintoneへ取り込むときは、「何を取り込むか」より先に「何を正本にするか」を決めます。

データ 正本にしやすい場所 kintoneでの役割
会計取引 freee、会計ソフト 予実用の実績として参照・集計する
請求書 会計ソフト、請求システム 請求済み状態や金額を確認する
売上明細 販売管理、基幹 管理会計用に部門・案件へ寄せる
原価明細 購買、在庫、会計 案件・科目へ紐づける
工数 工数管理、勤怠 案件原価や部門費に反映する
初期予算 スプレッドシート、経営計画 kintoneの予算アプリへ取込む
予実差分 kintone アクション、コメント、会議履歴へつなげる

外部連携では、連携ログを必ず作ります。

ログ項目 理由
取込元 freee、基幹、CSVなどを識別する
取込日時 いつの数字か説明できるようにする
取込対象期間 何月分を取り込んだか確認する
成功件数 件数差異を確認する
失敗件数 エラーを見逃さない
エラー内容 科目未設定、部門未設定、重複などを修正する
実行者 手動実行の場合の責任を残す
再実行フラグ 修正後に再取込する

予実管理で多いエラーは、連携そのものではありません。

マスタ不一致です。

freee側の部門名とkintone側の部門名が違う。

会計科目はあるが、管理科目への変換がない。

案件コードが空欄。

税込・税抜が混ざっている。

取引日と予実対象月が違う。

このようなエラーを、取込時に落とすのか、確認待ちとしてkintoneに入れるのかを決めます。

おすすめは、次の3段階です。

状態 扱い
正常取込 集計対象に入れる
確認待ち kintoneに入れるが集計対象から外す
取込エラー ログだけ残し、元データ修正後に再実行する

この状態を分けると、予実差分を見たときに「本当に未達なのか、実績が未取込なのか」を分けて確認できます。

権限設計:予算と実績の見せ方を分ける

予実管理では、権限設計を後回しにしない方がよいです。

予算、粗利、原価、人件費、部門別損益は、全員に見せる数字ではないことがあります。

kintoneでは、アプリごと、レコードごと、フィールドごとの3つのレベルでアクセス権を設定できます。

kintoneヘルプ:アクセス権の設定

予実管理では、次のように分けます。

役割 見せる範囲
経営者 全社、全部門、全科目、会議アクション
管理部門 全社または管理対象部門、連携ログ、エラー
部門長 自部門の予算、実績、差分、アクション
案件責任者 自案件の売上、原価、粗利、対応タスク
現場担当 自分のタスク、確認依頼、入力すべき実績
外部メンバー 原則見せない、必要なら限定フォーム

注意すべきなのは、グラフや一覧です。

レコード本体を見せていなくても、集計結果で見えてしまう数字があります。

原価、粗利、人件費、部門別利益は、レコード権限だけでなく、グラフ、一覧、集計結果アプリ、エクスポート権限まで確認します。

また、定期レポートは設定者の閲覧権限に影響されるため、誰が設定するかも決めます。

権限は、あとからでも変えられます。

しかし、予実管理では過去データと集計結果に影響するため、最初に「誰がどの粒度の数字を見るか」を決めておく方が安全です。

一覧と通知は差分・未更新・異常値を中心に作る

予実管理で日々見るべきなのは、全予実一覧ではありません。

確認が必要な数字です。

一覧 対象
今月の予実差分 当月の予算、実績、差額、達成率
未達部門 達成率が基準を下回る部門
超過費用 予算を超えている管理科目
原価超過案件 原価実績が予算を超えている案件
実績未取込 対象月なのに実績が入っていないデータ
確認待ち実績 部門、科目、案件が未確定の実績
連携エラー freeeや基幹から取り込めなかったデータ
アクション未完了 差分対応の期限を過ぎたタスク

通知も、数字の更新ではなく、例外に絞ります。

通知タイミング 宛先 内容
月初の予算未登録 部門長、管理部門 対象月の予算が未登録
実績取込失敗 管理部門、システム管理者 取込エラーの修正依頼
実績確認待ち 部門長、経理 部門・科目・案件の確認依頼
予算超過 部門長、経営者 超過金額と原因確認
達成率低下 営業責任者、案件責任者 未達部門・未達案件の確認
アクション期限超過 担当者、上長 対応期限の超過
月次締め前 管理部門、部門長 未確定実績の確認

通知文面は、次の行動が分かるようにします。

「予実が更新されました」では弱いです。

「6月の広告費が予算を30万円超過しています」「A部門の実績に管理科目未設定が5件あります」「B案件の原価超過アクションが期限切れです」のように、確認対象と行動を明示します。

よくある失敗パターン

kintone予実管理でよくある失敗は、集計表から作り始めることです。

失敗 起きること 対策
予算と実績を同じアプリに入れる 発生単位と計画単位が混ざる 予算、実績、集計結果を分ける
予算粒度を決めない 部門別、案件別、科目別の比較がずれる 先に集計軸を決める
会計科目をそのまま使う 経営会議で見づらい 管理科目への変換表を作る
実績日を曖昧にする 月次予実が毎回ずれる 売上計上日、発生日など基準を決める
予算を上書きする 当初計画との差分が消える 当初予算、修正予算、着地見込を分ける
グラフだけで会議する 会議時点の数字が残らない 集計結果アプリやレポートで保存する
連携ログを作らない 未取込や二重取込に気づけない 成功、失敗、再実行を記録する
権限を後回しにする 粗利や人件費が見えすぎる アプリ、レコード、フィールド権限を設計する
差分アクションを作らない 予実を見ても改善につながらない 担当、期限、打ち手をレコード化する

特に避けたいのは、「スプレッドシートの予実表をそのままkintone化する」ことです。

列を移せば、予算、実績、差額、達成率の画面はすぐできます。

しかし、その表の裏にある、実績の取込、科目変換、部門変換、会議後のアクションは整理されません。

予実表の再現ではなく、予算と実績が集まり、差分が行動へ戻る業務の流れを設計します。

1週間で始めるならこの順番

最初から全社の予実管理を完成させる必要はありません。

ただし、集計粒度だけは最初に決めます。

日程 やること 成果物
1日目 何の予実を見るか決める 売上、原価、費用、粗利、案件収支などの対象
2日目 集計粒度を決める 月次、部門、案件、管理科目の組み合わせ
3日目 予算アプリを設計する 当初予算、修正予算、責任者、状態
4日目 実績データの取込元を整理する freee、基幹、CSV、手入力の範囲
5日目 科目・部門・案件のマスタを整える 変換表、コード、除外条件
6日目 集計結果アプリと一覧を作る 差額、達成率、確認待ち、エラー
7日目 月次会議のアクションを設計する 担当、期限、打ち手、次回確認

最初の検証では、1部門または1案件で十分です。

過去1か月分の予算と実績を入れてみます。

そのとき、次の確認をします。

  • 予算と実績が同じ月で比較できるか
  • 部門、案件、管理科目がそろっているか
  • 会計ソフトの数字と説明できる差異になっているか
  • 実績の未取込や確認待ちを見つけられるか
  • 差分を見た後、担当アクションへ進めるか
  • 月次会議で見た数字を残せるか

この確認で詰まるところが、本格実装前に設計すべき論点です。

実装前チェックリスト

kintone予実管理を実装する前に、次の項目を確認します。

  • 予実管理の対象が、売上、原価、費用、粗利、案件収支のどれか決まっている
  • 予算と実績を比較する期間が決まっている
  • 部門、案件、管理科目のどの粒度で見るか決まっている
  • 予算アプリと実績アプリのレコード単位が分かれている
  • 当初予算、修正予算、着地見込を分けるか決まっている
  • 会計上の勘定科目と、管理会計上の管理科目を分けるか決まっている
  • freee、基幹、スプレッドシートのどれを実績の取込元にするか決まっている
  • 外部IDや取込日時を持ち、二重取込を防げる
  • 取込エラー、確認待ち、集計対象外の状態を分けている
  • 集計結果をグラフで見るだけか、集計結果アプリに保存するか決まっている
  • 月次会議時点の数字を残す方針がある
  • 経営者、部門長、現場担当の閲覧範囲が決まっている
  • 粗利、人件費、原価などのフィールド権限を確認している
  • 予算超過、未達、未取込、アクション期限超過の一覧がある
  • 差分に対して担当者、期限、打ち手を登録できる
  • 予実管理を会計上の正式帳簿として扱わない方針が明確になっている

このチェックリストで詰まるところが、kintoneの設定前に決めるべきことです。

特に、管理科目、部門、実績日の基準、集計結果の保存方針は後から直すと重くなります。

過去データが積み上がる前に決めます。

まとめ

kintoneで予実管理を作ること自体は難しくありません。

予算、実績、差額、達成率を入れて、グラフを作れば始められます。

しかし、実務で使える予実管理にするには、予実表だけでは足りません。

必要なのは、予算、実績、集計条件、集計結果、定期レポート、差分アクション、外部連携ログの境界を決めることです。

kintoneは、予算と実績の差分を見せ、部門長や案件責任者のアクションへ戻す場所として向いています。

一方で、正式な会計取引、仕訳、請求、売掛、入金消込、決算は、freeeなどの会計ソフトや基幹システムを正本にした方がよい領域です。

予実管理をkintoneで始めるなら、まず次の3つを決めてください。

  • 予算と実績を、どの期間・部門・案件・科目で比較するか
  • 実績データの正本を、kintone、freee、基幹、スプレッドシートのどこに置くか
  • 集計結果を見た後、誰がどのアクションを取るか

この3つが決まっていれば、kintone予実管理は単なるグラフではなく、経営判断と現場改善をつなぐ業務システムになります。

逆に、ここを曖昧にしたまま予実表だけ作ると、毎月の会議で「この数字は何を集計したものか」を説明する時間が増えます。

予実管理は、数字を比べる仕事ではありません。

予算と実績の差分を見て、次に何を変えるかを決める業務です。

kintone業務アプリ設計支援

kintone予実管理を経営判断に使える形へ設計します

プラグイン設定だけで終わらせず、予算・実績アプリ、集計結果、定期レポート、freee・基幹・スプレッドシート連携まで実務で回る構成に落とし込みます。

著者
守高 成悟
守高 成悟

代表取締役 CEO

千葉県出身。10歳の頃からプログラミングを始め、ゲーム、Webサイト、ロボット、スマホアプリなどを制作。大阪大学基礎工学部情報科学科で情報工学と統計学を学び、大学時代はAIを研究。大学在学中にWeb広告代理店でのインターンや人材系Webサービスの立ち上げを経験し、卒業後はフリーランスエンジニアとしてGISシステム、データ基盤構築、Webシステムの開発に従事。10年以上のWebアプリ開発・データ分析経験を基に、2023年9月に株式会社ビットライトを設立し、現場業務の仕組み化からデータ基盤構築、データ活用支援までを一気通貫で支援。

運営会社
株式会社ビットライト
株式会社ビットライト

顧客が本当に必要だった価値を、実装する。

現場業務の仕組み化からデータ基盤構築、データ活用支援までを一気通貫で支援しています。

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