kintone業務設計研究所 > kintone在庫管理の設計方法|入出庫・引当・棚卸差異まで崩れない業務アプリ構成
2026年6月8日
•約26分で読めます
kintoneで在庫管理を作る前に決めるべき、商品マスタ、入出庫履歴、在庫残高、引当、有効在庫、棚卸差異、拠点・ロット、WMS・EC・freee連携の設計を整理します。
kintoneで在庫管理を作りたいです。商品マスタに「現在庫」フィールドを作って、入庫や出庫のたびに数を更新すればよいですか。
備品を数えるだけなら、それでも始められる。ただ、業務で使う在庫管理にするなら危ない。現在庫だけを直せる画面を作ると、あとで「なぜその数になったか」が説明できなくなる。
kintoneで在庫管理を作る相談では、「今のExcelをアプリに移せばよいか」「商品マスタに現在庫を持たせればよいか」という話になりがちです。
小規模な備品や販促物なら、それでも始められます。
ただし、販売、出荷、購買、棚卸し、会計まで関わる在庫管理では、Excelの列をそのままkintoneアプリに移しても長く持ちません。
在庫管理で本当に困るのは、画面に在庫数を表示できないことではなく、次のような状態です。
kintoneで在庫管理を作るなら、最初に設計すべきなのは「在庫管理アプリ」ではありません。
商品、保管場所、入出庫、引当、棚卸し、発注、外部連携を、どの単位のデータとして分けるかです。
kintone在庫管理で最初に決めるべきなのは、アプリ名やフィールドではなく、「どのデータを正本にするか」と「数量が変わる業務イベントをどう残すか」です。
この記事では、サンプルアプリの作り方ではなく、在庫業務をkintone上でどう分解し、どこまでkintoneで持ち、どこから専用システムや外部連携に逃がすべきかを整理します。
kintoneで在庫管理を作るとき、商品アプリに「現在庫」という数値フィールドを置きたくなります。
これは画面としては分かりやすいです。
しかし、現在庫を人が直接編集できる設計にすると、実務ではすぐに崩れます。
たとえば、ある商品の在庫が50個から37個に減ったとします。
この13個の減少は、販売出荷なのか、社内利用なのか、破損廃棄なのか、棚卸し差異の調整なのか、別倉庫への移動なのか。
ここが分からない在庫管理は、数字が合っているように見えても信用できません。
基本方針は次です。
| 考えるもの | 正本にするデータ | 目的 |
|---|---|---|
| 商品の定義 | 商品マスタ | SKU、単位、カテゴリ、管理責任者をそろえる |
| 数量の変化 | 入出庫履歴 | なぜ増減したかを説明できるようにする |
| 現在の見え方 | 在庫残高 | 現場が今見る数量を出す |
| 売れる数量 | 引当・出荷予定 | すでに押さえた数量を現在庫から分ける |
| 実物とのズレ | 棚卸し | 帳簿在庫、実棚数、差異理由を残す |
| 外部との責任範囲 | 連携ログ | EC、WMS、会計とのズレを追う |
在庫残高は大事です。
ただし、在庫残高は「結果」です。正本にすべきなのは、入庫、出庫、返品、移動、破損、棚卸調整のような、在庫が動いた理由です。
現在庫が見られれば十分だと思っていました。
現在庫は見るための数字じゃ。業務で守るべきなのは、その数字を説明できる履歴の方じゃ。
kintoneは、すべての在庫管理を置き換えるツールではありません。
向いているのは、現場の確認、入力、承認、例外処理、周辺業務とのつながりが重要な在庫管理です。
| kintoneに向く在庫管理 | 理由 |
|---|---|
| 社内備品 | 保管場所、利用者、補充タイミングを部門横断で見たい |
| 販促物・展示会用品 | 案件、イベント、担当者と入出庫を紐づけたい |
| サンプル品・貸出品 | 顧客、貸出、返却、破損、担当者を追いたい |
| 小規模な部材・資材 | Excelより履歴、権限、通知を整えたい |
| 既存WMSの例外管理 | 本体在庫ではなく、問い合わせ、調整、承認だけを持ちたい |
| 多拠点の見える化 | 各拠点の在庫状況や発注候補を同じ画面で確認したい |
一方で、次の条件が強いなら、kintoneだけで完結させるのは重くなります。
| kintoneだけでは重い在庫管理 | 理由 |
|---|---|
| EC公開在庫をリアルタイムに制御する | 同時注文、キャンセル、出荷、返品が秒単位で反映される |
| 倉庫作業端末やバーコード検品が中心 | 入力速度、端末UI、検品フローの専用性が必要 |
| ロット、期限、シリアル番号を厳密に追う | 追跡粒度が細かく、誤登録の影響が大きい |
| 原価、粗利、棚卸評価、売上原価まで扱う | 会計・税務上の正式処理が必要 |
| 大量出荷、大量入荷がある | 手入力や単純なレコード更新では追いつかない |
| 生産計画やMRPと連動する | 所要量計算、工程、仕掛品、原価まで絡む |
ここで無理に「全部kintoneでやる」と決めない方がよいです。
kintoneは、在庫管理の周辺にある現場業務を整えるには強いです。
ただし、物流、EC、会計の中核まで抱え込むと、責任範囲が曖昧になります。
kintoneを在庫の正本にするか、在庫業務の入力・確認・例外処理の窓口にするかを先に分ける ことが重要です。
kintoneで在庫管理を作るなら、最初から巨大な1アプリにしない方がよいです。
Excelで横に長い表を使っていた会社ほど、次の項目を1アプリに詰め込みがちです。
これでは、商品情報、入出庫履歴、棚卸し、発注が混ざります。
kintoneでは、最低でも次の単位に分けます。
| アプリ | 1レコードの意味 | 主なプロパティ |
|---|---|---|
| 商品マスタ | 1商品、または1SKU | 商品コード、商品名、単位、カテゴリ、管理責任者、利用状態 |
| 保管場所マスタ | 1拠点、1倉庫、1棚 | 拠点、倉庫、棚番、利用可否、担当者 |
| 入出庫履歴 | 1回の在庫増減 | 商品、保管場所、区分、数量、日付、理由、関連伝票 |
| 在庫残高 | 1商品 x 1保管場所 | 現在庫、引当済み、有効在庫、発注中、最終更新日 |
| 引当・出荷予定 | 1注文、1出荷予定 | 商品、数量、顧客、納期、出荷状態 |
| 棚卸し | 1回の棚卸明細 | 帳簿在庫、実棚数、差異、差異理由、確認者 |
| 発注・入荷予定 | 1発注、1入荷予定 | 仕入先、発注数、入荷予定日、入荷済み数 |
| 連携ログ | 1回の外部連携 | 連携先、対象レコード、結果、エラー、再実行状態 |
小さく始める場合でも、商品マスタと入出庫履歴は分けます。
現在庫を商品マスタに置く場合も、直接編集するためではなく、在庫残高から反映された確認用の値として扱う方が安全です。
商品マスタで最初に決めるべきなのは、商品名ではありません。
「何を1商品として扱うか」です。
同じ商品でも、サイズ、色、ロット、期限、単位、保管場所によって、在庫管理上は別物として扱う必要があります。
| 論点 | 例 | 設計判断 |
|---|---|---|
| SKU | 同じ商品でも色・サイズが違う | SKU単位で商品マスタを分ける |
| 単位 | 個、箱、kg、m | 入出庫と棚卸しで同じ単位にする |
| 保管場所 | 本社、倉庫、店舗、棚番 | 在庫残高は商品 x 保管場所で持つ |
| ロット | 食品、薬品、部材ロット | ロット管理が必要なら残高粒度を増やす |
| 有効期限 | 期限切れが業務リスクになる | 期限別在庫や専用システムを検討する |
| 廃番 | もう使わない商品 | 削除せず利用状態で止める |
商品マスタに置く項目は、次のように分けると考えやすいです。
| 項目 | 用途 |
|---|---|
| 商品コード | 表記揺れと重複を防ぐ |
| 商品名 | 現場が識別する名称 |
| SKU | 色、サイズ、型番などの管理単位 |
| 単位 | 入出庫と棚卸しの単位をそろえる |
| カテゴリ | 備品、商品、部材、販促物などを分ける |
| 標準保管場所 | 通常置く場所を示す |
| 発注点 | 補充判断の基準にする |
| 標準発注数 | 発注候補を作るときの目安にする |
| 仕入先 | 発注先候補を紐づける |
| 管理責任者 | 棚卸しや補充の責任者を決める |
| 利用状態 | 利用中、停止予定、廃番を分ける |
商品マスタで避けたいのは、現場が自由入力で商品名を増やせる状態です。
「USBケーブル」「USB ケーブル」「USB-Cケーブル」「type-cケーブル」のような揺れが出ると、在庫数以前に集計が壊れます。
商品マスタは、在庫管理の辞書です。
辞書が揺れると、入出庫履歴も棚卸しも発注も揺れます。
在庫数が変わる操作は、すべて入出庫履歴として残します。
ここで重要なのは、入庫アプリと出庫アプリを分けるかどうかではありません。
重要なのは、在庫が動いた「イベント」を構造化して残すことです。
| フィールド | 型 | 設計意図 |
|---|---|---|
| 履歴番号 | 自動採番、文字列 | 問い合わせや監査で参照できるようにする |
| 商品 | ルックアップ、関連レコード | 商品マスタとつなぐ |
| 保管場所 | ルックアップ、関連レコード | どこで増減したかを残す |
| 発生日 | 日付、日時 | 入庫日、出庫日、調整日を残す |
| 区分 | ドロップダウン | 入庫、出庫、移動、返品、破損、棚卸調整 |
| 数量 | 数値 | 実際に動いた数量 |
| 増減方向 | 計算、または区分で判定 | 入庫はプラス、出庫はマイナス |
| 関連元 | 関連レコード | 注文、発注、棚卸、案件、顧客など |
| 理由 | ドロップダウン、文字列 | なぜ在庫が動いたか |
| 登録者 | 作成者、ユーザー選択 | 誰が入力したか |
| 確認状態 | プロセス管理、ステータス | 下書き、確認待ち、確認済み、取消 |
入出庫履歴で一番やってはいけないのは、過去の履歴を後から上書きして帳尻を合わせることです。
誤登録があった場合は、原則として削除ではなく、取消履歴や逆方向の調整履歴を残します。
| 起きたこと | 悪い処理 | よい処理 |
|---|---|---|
| 出庫数を10個で登録すべきところ1個で登録した | 元レコードを9個に直す | 追加出庫9個の履歴を登録する |
| 誤って別商品で入庫した | 履歴を削除する | 誤入庫取消と正しい入庫を残す |
| 棚卸しで5個少なかった | 現在庫だけ5個減らす | 棚卸調整の出庫履歴を作る |
| 倉庫Aから倉庫Bへ移動した | 倉庫名を書き換える | Aからの出庫、Bへの入庫として残す |
在庫管理では、間違いが起きる前提で戻し方を設計します。
入出庫履歴は、きれいな数字を作るためではなく、あとで在庫差異の理由をたどるために残す と考えるべきです。
在庫管理で混同されやすいのが、現在庫と有効在庫です。
現在庫が100個あっても、すでに80個が注文や社内利用予定で押さえられていれば、自由に使える数量は20個です。
この20個が有効在庫です。
| 数量 | 意味 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 現在庫 | 倉庫や棚にある数量 | 実物の把握、棚卸し |
| 引当済み | 注文、出荷予定、利用予定で押さえた数量 | 欠品防止、納期回答 |
| 有効在庫 | 現在庫 - 引当済み | 販売可否、利用可否 |
| 発注中 | まだ入荷していない発注数量 | 補充予定の確認 |
| 入荷予定後在庫 | 有効在庫 + 発注中 | 将来の在庫見込み |
kintoneで引当を扱うなら、注文アプリや出荷予定アプリを在庫残高とつなぎます。
| アプリ | 役割 |
|---|---|
| 注文・受注アプリ | 顧客、商品、数量、希望納期を管理する |
| 出荷予定アプリ | いつ、どこから、何個出すかを管理する |
| 引当アプリ | 商品、保管場所、数量、解除条件を管理する |
| 在庫残高アプリ | 現在庫、引当済み、有効在庫を表示する |
小規模なら、注文アプリのステータスが「出荷待ち」になったものを引当済みに含める設計でも十分です。
ただし、ECやWMSとつなぐ場合は注意が必要です。
EC側が注文を受けた瞬間に在庫を押さえるなら、引当の正本はECやWMS側に置いた方が安全です。kintone側で同じ引当を別計算すると、キャンセル、返品、出荷分割のタイミングでズレます。
この場合、kintoneは「引当の正本」ではなく、「引当状況を確認する画面」や「例外処理の申請先」に寄せます。
在庫残高をどう更新するかは、kintone在庫管理の設計でかなり重要です。
選択肢は大きく4つあります。
| 更新方法 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 手動更新 | 品目数が少ない、備品管理から始める | 更新漏れ、二重更新を防ぐ確認ルールが必要 |
| プラグイン | 標準的な入出庫集計で足りる | プラグインの仕様に業務を合わせる部分が出る |
| JavaScriptカスタマイズ | 画面上で入力補助や残高反映をしたい | 保守担当、テスト、権限との組み合わせが必要 |
| API・外部バッチ | EC、WMS、会計、BIと連携する | 連携ログ、再実行、二重登録防止が必要 |
kintone REST APIには、レコードの取得、登録、更新、削除、ステータス更新などのAPIがあります。
cybozu developer network:レコード API
APIがあるので、外部システムと連携すること自体は可能です。
ただし、API連携を作れば在庫管理が完成するわけではありません。
連携前に決めるべきことがあります。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 更新元 | 入出庫履歴、WMS、EC、販売管理のどれが残高を変えるか |
| 更新タイミング | 即時、5分ごと、1日1回、締め後 |
| 二重登録防止 | 外部ID、履歴番号、連携キーを持つ |
| エラー時の扱い | 再実行、手動補正、差戻し、通知先 |
| 競合時の扱い | どちらを正にするか、手動確認に回すか |
| ログ | 成功、失敗、再実行、取消を残す |
特に在庫残高は、複数の操作が同時に走るとズレやすい領域です。
「入出庫履歴を登録したら残高を更新する」だけなら簡単に見えます。
しかし、同時に2人が出庫を登録した場合、外部ECから注文が入った場合、棚卸し調整が重なった場合に、どの順番で処理するかを決めておかないと、残高が信用できなくなります。
在庫残高の自動更新は、計算式の問題ではなく、更新順序、二重登録防止、エラー時の戻し方の問題 です。
棚卸しは、帳簿在庫を実物に合わせるためだけの作業ではありません。
本来は、運用のどこが崩れているかを見つける作業です。
kintoneで棚卸しを扱うなら、棚卸しアプリを分けます。
| フィールド | 型 | 目的 |
|---|---|---|
| 棚卸し回 | 文字列、関連レコード | 月次、四半期、期末などを分ける |
| 商品 | ルックアップ | 対象商品を指定する |
| 保管場所 | ルックアップ | 対象倉庫、棚を指定する |
| 帳簿在庫 | 数値 | kintone上の在庫数を固定する |
| 実棚数 | 数値 | 実際に数えた数量を入れる |
| 差異 | 計算 | 実棚数 - 帳簿在庫 |
| 差異理由 | ドロップダウン、文字列 | 登録漏れ、破損、数え間違いなど |
| 確認者 | ユーザー選択 | 誰が確認したか |
| 調整状態 | プロセス管理 | 未確認、確認待ち、調整済み |
棚卸し差異が出たとき、在庫残高を直接上書きして終わらせてはいけません。
差異理由ごとに、次の処理へつなぎます。
| 差異理由 | 次の処理 |
|---|---|
| 出庫登録漏れ | 出庫履歴を追加する |
| 入庫登録漏れ | 入庫履歴を追加する |
| 破損、廃棄 | 破損または廃棄履歴を追加する |
| 倉庫移動漏れ | 移動履歴を追加する |
| 数え間違い | 再棚卸しする |
| 原因不明 | 棚卸調整履歴を残し、再発確認に回す |
棚卸しアプリで見るべき一覧は、全件一覧ではありません。
次のような例外一覧を作ります。
| 一覧 | 条件 | 見る人 |
|---|---|---|
| 差異あり | 差異が0ではない | 倉庫担当、管理者 |
| 大差異 | 差異金額、または差異数量が一定以上 | 管理者 |
| 未確認 | 調整状態が未確認、確認待ち | 確認者 |
| 原因不明 | 差異理由が原因不明 | 業務責任者 |
| 調整待ち | 差異は確定したが調整履歴未作成 | 在庫管理担当 |
棚卸し差異は、現場の入力漏れ、保管場所の分け方、権限、通知、教育不足を教えてくれます。
差異を消すだけなら、翌月も同じズレが出ます。
在庫管理は、管理粒度を細かくするほど正確になります。
ただし、細かくするほど入力が重くなります。
kintoneで設計するときは、「管理できるか」ではなく「現場が入力し続けられるか」で判断します。
| 管理粒度 | kintoneで持つ判断 | 注意点 |
|---|---|---|
| 拠点 | 複数拠点の在庫を見たいなら持つ | 拠点間移動の履歴が必要 |
| 倉庫 | 出荷元や棚卸し単位が違うなら持つ | 倉庫名の表記揺れを防ぐ |
| 棚番・ロケーション | 探す時間や誤出庫が問題なら持つ | 現場入力が細かくなる |
| ロット | 品質、期限、回収対応が必要なら持つ | ロット別残高が必要 |
| 有効期限 | 期限切れリスクがあるなら持つ | 期限別の先入先出が必要 |
| シリアル番号 | 個体追跡が必要なら持つ | 1個1レコードに近くなる |
ロットや有効期限まで必要な場合、在庫残高は「商品 x 保管場所」では足りません。
「商品 x 保管場所 x ロット x 有効期限」のように粒度が増えます。
この段階になると、kintoneだけで頑張るより、専用在庫システムやWMSを正本にして、kintoneは例外申請、棚卸差異、マスタ確認、営業・購買との連携画面に寄せる方が現実的なことがあります。
細かく管理した方が、精度は高くなりますよね。
理屈ではそうじゃ。ただし、現場が毎回ロットや棚番を入れられないなら、細かい設計はすぐに空欄だらけになる。粒度は現場入力の負荷とセットで決めるべきじゃ。
在庫管理は、単独では終わりません。
多くの場合、受注、出荷、発注、入荷、請求、会計とつながります。
ここで大事なのは、kintoneに全部を持たせないことです。
| 領域 | kintoneで持ちやすいもの | 別システムを正本にしやすいもの |
|---|---|---|
| 受注 | 社内確認、出荷依頼、例外対応 | EC注文、販売管理上の正式受注 |
| 出荷 | 出荷予定、出荷依頼、差戻し | WMSの出荷実績、送り状、検品 |
| 発注 | 発注候補、承認、仕入先確認 | 購買システムの正式発注 |
| 入荷 | 入荷予定、検品結果、差異報告 | WMS、販売管理の入荷実績 |
| 請求 | 請求対象の確認、例外メモ | 請求書、売上、入金消込 |
| 会計 | 棚卸しメモ、在庫差異確認 | 棚卸評価、原価、仕訳、税務 |
freeeなどの会計ソフトと連携する場合も同じです。
kintoneに在庫の状態や業務メモを持たせることはできます。
しかし、会計上の棚卸評価、売上原価、請求、仕訳までkintoneで無理に持つと、責任範囲が曖昧になります。
会計は会計ソフト、出荷はWMS、公開在庫はEC、現場の確認や例外処理はkintone。
このように分ける方が、あとから壊れにくいです。
在庫管理では、入力方法も設計対象です。
「kintoneに入力する」と言っても、PCのフォーム、スマホ、バーコード、OCR、外部フォームでは向いている場面が違います。
| 入力方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| PCフォーム | 商品登録、発注、棚卸し確認 | 現場でその場入力しにくい |
| スマホ入力 | 倉庫、店舗、外出先での入出庫 | 画面項目を絞らないと使われない |
| バーコード | SKUや棚番を素早く特定したい | バーコードマスタ、読み取り端末、例外時の処理が必要 |
| OCR | 紙伝票や納品書を一次入力したい | 読み取り結果の確認者が必要 |
| 外部フォーム | 社外メンバーや店舗から入力したい | 権限、本人確認、添付ファイルの扱いが必要 |
| CSV取込 | 初期移行、月次一括反映 | 重複、文字コード、項目マッピングが必要 |
入力方法を選ぶときは、入力精度と入力負荷を一緒に見ます。
たとえば棚卸しでスマホ入力を使うなら、画面には商品、保管場所、実棚数、差異メモだけを出す方がよいです。発注点、仕入先、会計メモまで同じ画面に出すと、現場では重くなります。
バーコードを使う場合も、読み取った後の処理が必要です。
商品が見つからない、棚番が違う、数量単位が違う、同じバーコードの商品が複数ある。
こうした例外を考えないままバーコード化すると、結局あとで管理者が手修正する運用になります。
kintoneでは、一覧、通知、プロセス管理、アクセス権を組み合わせて運用できます。
kintone公式ヘルプでも、プロセス管理に一覧、通知、アクセス権を組み合わせる考え方が整理されています。
kintoneヘルプ:プロセス管理と組み合わせると便利な設定
在庫管理でも、全件一覧をきれいに作るより、例外を拾う一覧を作る方が有効です。
| 一覧 | 条件 | 見る人 |
|---|---|---|
| 要発注 | 有効在庫が発注点以下 | 購買、管理者 |
| 引当不足 | 引当済みが現在庫を超えている | 営業、出荷担当 |
| 入荷遅延 | 入荷予定日を過ぎても未入荷 | 購買 |
| 未確認入出庫 | 確認状態が確認待ち | 確認者 |
| 棚卸差異あり | 差異が0ではない | 倉庫、管理者 |
| 保管場所未設定 | 保管場所が空 | マスタ管理者 |
| 連携エラー | 外部連携結果が失敗 | システム担当 |
通知も同じです。
すべての入出庫を通知すると、誰も見なくなります。
通知するのは、行動が必要な状態だけです。
| 通知する状態 | 通知しすぎない方がよい状態 |
|---|---|
| 有効在庫が発注点を下回った | すべての入庫登録 |
| 引当不足が発生した | 商品名の軽微な修正 |
| 入荷予定日を過ぎた | 参考メモの追加 |
| 棚卸し差異が大きい | 全商品の棚卸し完了 |
| 確認待ちが残っている | 確認済み履歴の閲覧 |
| 外部連携が失敗した | 連携成功ログ |
権限も後回しにできません。
kintoneは、アプリ、レコード、フィールドの単位でアクセス権を設定できます。
在庫管理では、特に数量を変えられる人を絞ります。
| 役割 | 閲覧 | 追加 | 編集 | 削除 |
|---|---|---|---|---|
| 倉庫担当 | 在庫、入出庫、棚卸し | 入出庫、棚卸し | 自分の担当範囲 | 原則不可 |
| 営業 | 有効在庫、引当状況 | 出荷依頼、引当依頼 | 自分の依頼 | 原則不可 |
| 購買 | 発注、入荷、仕入先 | 発注、入荷予定 | 発注関連 | 原則不可 |
| 管理者 | 全体 | 全体 | 全体 | 制限付き |
| 外部連携ユーザー | API対象のみ | API対象のみ | API対象のみ | 原則不可 |
削除権限は慎重に扱います。
入出庫履歴や棚卸し履歴を削除できると、差異の説明ができなくなります。
間違えた場合は、削除ではなく、取消履歴や調整履歴で戻す設計にします。
kintone在庫管理の失敗は、機能不足より設計不足で起きます。
| 失敗 | 起きること | 設計で直すこと |
|---|---|---|
| 商品アプリに現在庫を直接入力する | 増減理由が追えない | 入出庫履歴を正本にする |
| 入庫と出庫をメモ欄で処理する | 集計できない | 区分、数量、保管場所を構造化する |
| 商品名を自由入力にする | 表記揺れで在庫が分かれる | 商品マスタとルックアップにする |
| 保管場所を文字列で入れる | 倉庫名、棚名が揺れる | 保管場所マスタを作る |
| 引当を持たない | 売れると思った在庫が足りない | 出荷予定、注文、引当を分ける |
| 棚卸差異を上書きで直す | 原因が残らない | 棚卸調整履歴を作る |
| 権限を後回しにする | 誰でも数量を変えられる | アプリ、レコード、フィールド権限を設計する |
| API連携だけ先に作る | 間違った在庫数が自動で広がる | 正本、連携ログ、再実行ルールを決める |
| 通知を増やしすぎる | 重要通知まで見られない | 例外だけ通知する |
| 全部kintoneで完結させる | EC、WMS、会計との責任範囲が曖昧になる | kintoneに持たない領域を決める |
特に危ないのは、在庫残高だけをきれいに見せることです。
ダッシュボード上の数字が整っていても、入出庫履歴、引当、棚卸差異、連携ログが説明できなければ、業務では使えません。
最初から完全な在庫管理システムを作る必要はありません。
小さく始めるなら、1週間で次の順番で設計します。
| 日 | やること | 成果物 |
|---|---|---|
| 1日目 | 在庫の範囲を決める | 対象商品、対象拠点、kintoneに持たない範囲 |
| 2日目 | 商品マスタと保管場所マスタを作る | SKU、単位、カテゴリ、保管場所の定義 |
| 3日目 | 入出庫履歴を作る | 区分、数量、理由、確認状態 |
| 4日目 | 在庫残高と一覧を作る | 現在庫、有効在庫、要発注、未確認一覧 |
| 5日目 | 棚卸しと差異処理を作る | 帳簿在庫、実棚数、差異理由、調整履歴 |
| 6日目 | 権限と通知を設定する | 役割別の閲覧・編集、例外通知 |
| 7日目 | 連携と移行判断を整理する | EC、WMS、会計、CSV、APIの境界 |
この段階で、リアルタイム連携や高度な自動化まで入れなくて構いません。
まず作るべき状態は、次です。
ここまでできれば、次にプラグイン、JavaScript、API連携、WMS・EC・freee連携へ進めます。
逆に、この状態を作らないまま自動化すると、きれいに間違った在庫数が連携されます。
kintoneで在庫管理を作る前に、最低限次の質問に答えます。
| 質問 | 決めること |
|---|---|
| 在庫の正本はどこか | kintone、WMS、EC、販売管理、会計ソフトのどれか |
| 商品の管理粒度は何か | SKU、ロット、保管場所、単位、有効期限 |
| 数量を変える操作は何か | 入庫、出庫、移動、返品、破損、棚卸調整 |
| 現在庫はどう更新するか | 手動、プラグイン、JS、API、外部バッチ |
| 引当を扱うか | 注文、出荷予定、有効在庫の考え方 |
| 棚卸し差異をどう処理するか | 調整履歴、承認、再発防止 |
| 誰が確認するか | 倉庫、営業、購買、管理者の役割 |
| 誰が削除できるか | 原則不可にする範囲、取消履歴の扱い |
| 連携失敗時にどう戻すか | 再実行、二重登録防止、エラー通知 |
| 何をkintoneに持たないか | 会計評価、EC公開在庫、倉庫端末処理など |
このチェックリストに答えられない状態でアプリを作ると、あとからフィールド追加、権限変更、運用ルール追加が続きます。
小さく始めることはできます。
ただし、小さく始める範囲と、最初から設計しておく範囲は分けます。
商品コード、保管場所、入出庫区分、履歴の残し方、権限、正本システムは、最初に決めた方がよいです。
kintoneで在庫管理を作るときは、「在庫管理アプリを1つ作る」と考えない方がよいです。
商品マスタ、保管場所マスタ、入出庫履歴、在庫残高、引当、棚卸し、発注・入荷、連携ログを分けます。
そのうえで、どのデータを正本にするか、数量が変わる業務イベントをどう残すか、どの外部システムに責任を持たせるかを決めます。
kintone在庫管理の設計で大事なのは、現在庫を表示することではなく、その現在庫がどの履歴、どの引当、どの棚卸差異、どの連携処理から説明できるかです。
備品、販促物、サンプル品、小規模な部材管理なら、kintoneだけでも十分に始められます。
一方で、EC公開在庫、倉庫作業、ロット、有効期限、原価、会計、出荷指示まで含むなら、kintoneは周辺業務と例外処理に寄せ、在庫の正本は専用システムに置く判断も必要です。
テンプレートやプラグインを選ぶ前に、まず業務の流れとデータの責任範囲を決める。
それが、kintone在庫管理を崩れにくくする一番の近道です。
千葉県出身。10歳の頃からプログラミングを始め、ゲーム、Webサイト、ロボット、スマホアプリなどを制作。大阪大学基礎工学部情報科学科で情報工学と統計学を学び、大学時代はAIを研究。大学在学中にWeb広告代理店でのインターンや人材系Webサービスの立ち上げを経験し、卒業後はフリーランスエンジニアとしてGISシステム、データ基盤構築、Webシステムの開発に従事。10年以上のWebアプリ開発・データ分析経験を基に、2023年9月に株式会社ビットライトを設立し、現場業務の仕組み化からデータ基盤構築、データ活用支援までを一気通貫で支援。